第3回公演
スタッフ 制作・演出・脚本
キャスト イプスハイム・ギンデルバッハ侯爵 Baritone
上演に寄せて ウィーン西駅前のカフェ。ちょっと間延びしたようなウィーン訛りの喧騒が心地よい。せっかく注文した二杯めのメランジュが冷めるのも忘れて、私は第三幕の台本の執筆に熱中していた。公演をひと月後にひかえて思うように筆が進まず焦っていたのが、まるで嘘のように登場人物がひとりでに台詞を喋ってくれるのだ。私はただ幸せな気分に浸って、彼らのために口述筆記をしていただけ。どうやらこの街のゲミュートリッヒな雰囲気が、彼らにウィーンの血(Wiener Blut)をふき込んでくれたようだ。 ガレリア座の前身、ガレリア・プレイヤーズ時代に手掛けた"ウィーン気質"は、各キャストが当たり役として今も語られるチャーミングな舞台だったけれど、今回の再演ではもっともっとウィーンの薫りをみなさんにお伝えできると思っている。前回の公演から正味三か月、これに台本の遅れも加えて、役者はみんな相当苦しんだが、今やキャストの誰もが立派にウィーンの血を身につけて、勝手に楽しくやっている。舞台を下りてからのほうが"それらしい"というのも困ったものだが、この雰囲気、かならずやご満足いただけると確信している。 ♪可愛い小鳩ちゃん、おいでよかならず ・・・・・ガレリア座主宰 八木原 良貴
あらすじ ウィーン気質
登場人物 イプスハイム・ギンデルバッハ侯爵
第1幕 ツェドラウ伯爵家の別荘 ロイス・グライツ・シュライツの大使としてツェドラウ伯爵がウィーンに赴任して早3年。初めは野暮な堅物で、政略結婚で結ばれた生粋のウィーン娘たる夫人との間はうまくいっていなかった。しかし今やすっかりウィーンの水に馴染み、その御発展ぶりは従僕のヨーゼフも舌を巻くほど。郊外の夫人所有の別荘に、愛人でバレリーナのフランツィと暮らしているが、どうも最近はそこへも足が遠のきがちであるらしい。 本国からの首相訪問を知らせに、ヨーゼフが別荘を訪ねるが、主人は留守。逆にフランツィに伯爵の居所を問い詰められる(第1曲「アンナ、アンナ」)。 そこへ伯爵がご帰館、5日も放っておかれたと怒るフランツィを優しくなだめるが、(第2曲「おはよう、いい子ちゃん」)、その舌の根も乾かぬうち、ヨーゼフと何やら怪しい相談。街の仕立屋のお針子をモノにしたいという伯爵に、ヒーツィングの夜祭りに誘い出せばいかが、手紙の代筆は引き受けますと手慣れたヨーゼフ(第3曲「それじゃ始めてくれ」)。 そのお針子がまさかヨーゼフの恋人ペピとは知るよしもない。手紙を手に伯爵が出掛けると、ペピが注文のドレスを届けにやってくる(第4曲「こんにちは、旦那様」)。 首相が辻馬車の御者と言い争う声が聞こえる。このお年寄りは、お国柄のせいかウィーンのテンポとはちょっとずれている人物。娘が伯爵と結婚すると信じ込んでいるフランツィの父親、カーグラーと話したせいもあって、フランツィこそ伯爵夫人と思い込む(第5曲フィナーレ「彼女だ」)。 首相は伯爵の浮いた噂を憂慮していて、最近の行状は目に余ると夫人を慰めたつもりだが、フランツィが怒って行ってしまうので、大困惑。折しも夫の浮気の真相を確かめに来た本物の伯爵夫人を、これが噂の愛人と勘違いした首相は、呑気に帰ってきた伯爵と、戻ってきたフランツィの前で、気をきかすつもりで夫人を自分の妻と紹介してしまい、かえって一同大混乱のまま幕となる。
第2幕 ビトウスキー伯爵邸の夜会 ペピはヨーゼフと些細なことで喧嘩し、つい伯爵の夜祭りへの誘いを受けてしまう。一方ヨーゼフはフランツィから、伯爵の浮気現場を押さえるため夜祭りに同行するよう言い付けられる。 ビトウスキー伯爵の紹介でようやく身分の明らかになった伯爵夫人に首相は平謝りだが、夫人は首相に伯爵の浮気現場を見に行きましょうと夜祭りへの同道を求める。こうしてパートナーを組み替えた3組のカップルの行方は?
第3幕 ウィーン郊外のヒーツィングのカジノの庭 人々が集まって今日の夜祭りを楽しんでいる(第6曲「グラスあげ歌え」、第7曲「ウィーンの歌を奏でるなら」)。そこへ様々な思惑を秘めた6人が、伯爵夫人と首相、フランツィとヨーゼフ、伯爵とペピの組み合わせでやってくる(第8曲「遠慮せずこちらへいらして」。) 主人思いのヨーゼフが伯爵に忠告すると、伯爵は"彼女"のことは頼むぞと言い残して立ち去る。ヨーゼフがその彼女の顔を拝みにいけば、そこには最愛のペピが!大喧嘩するのは愛あればこそ。 一方、伯爵夫人とフランツィは互いに身分を明かし、協力して浮気な伯爵を懲らしめる算段(第9曲「じゃあ力を合わせて」)。何も知らぬは伯爵ばかり。ペピもフランツィも収まる鞘に収まってしまえば、帰るところは妻の元。すべてはウィーン気質、恋も浮気も一夜の夢、優しく許してあげましょうという伯爵夫人の一言で大団円。ウィーン気質をみんなで讃えながら幕を閉じる(第10曲フィナーレ「ヴィーナー・ブルート」)。 |