第8回公演 オペレッタプロジェクト8
スタッフ 総監督・脚本・演出・芸術監督
キャスト ヘルベルト・シュレール男爵
上演に寄せて 「十八番」と書いて「おはこ」と読む。歌舞伎から出たこの言葉、広辞苑によれば、“得意な芸”のことなんだそうです。さしずめ、スカラ座の「ナブッコ」、ウィーンの「ばらの騎士」、ザルツブルグのモーツァルト…って所ですかね。 そして、私たちガレリア座といえば、そう、ガラ・オペレッタ。オリジナルストーリーに、いろいろなオペレッタからナンバーを引っ張ってきて、筋に合った歌詞を当てはめるんですが、これがなかなか。まるで本当に誰かが書いたオペレッタのように、しっくりいっちゃうんです。脚本、選曲、作詞が、三位一体となって沸きあがる夢の世界! ね、面白そうでしょ? 歌い手たちはもうすっかりこの世界が気に入って、練習のかなり早い段階からすっかりのぼせ上がっている。いつもながら気楽極楽の道楽者ぞろい! そして今回は歌い手だけじゃありません。舞台の設定がホテルのラウンジということもあって、ガレリア座管弦楽団の面々が、楽士という“俳優”の顔で演技しますし、バレエ陣も大いに歌います。つまりコレ、分野にこだわらず、できることなら何でもやってしまおうという、ガレリア座の原点のような公演なんです。どうです、ますます期待が膨らむでしょ? 小さな舞台に、楽しみをいっぱい詰めて、今日みなさんと共に…。 本日はご来場、ありがとうございました。 ・・・・・ガレリア座主宰 八木原 良貴
あらすじ ガレリア座オリジナル ガラオペレッタ
〜 プロローグ 〜 幼いルチアをあやすアンナの子守歌。 そこに込められたかなわぬ恋の物語の顛末を、全て知りながら、母子を見つめるベルンハルドの視線はどこまでも温かく、優しい…
〜 第 1 幕 〜 折しも不良貴族、コンラート・シュタッセン子爵の朝帰り。一曲がなってソファーに寝込んでしまう所に、コンラートの親友、ヘルベルト・シュレール男爵と、その恋人、ルチアがやってくる。 ヘルベルトは、ナタリア・エバート公爵令嬢との婚約が決まったばかり。エバート公爵は、娘との結婚を条件に、ヘルベルトの抱える借金の肩代わりを申し出てきたのだ。町娘のルチアにはどうしようもないなりゆき。 コンラートは二人をなぐさめようとするが、追いつめられたヘルベルトにはなす術もない。せめてルチアに、このバーデンにいる間だけは、甘い夢を見させてあげたい…そうヘルベルトは願う。 夜行われるマイヤー公爵の晩餐会の招待客リストに、ヘルベルトの実の祖母、カデット公爵夫人の名前を見つけたコンラートとヘルベルトは、ルチアをナタリア・エバート公爵令嬢に仕立てあげ、カデット公爵夫人の目をあざむこうとする。 ところがそこに、意にそまぬ結婚に憤慨したナタリア本人が、執事ベッポーを引き連れてウィーンから逃げてくる。 ナタリアは、バーデンで出会った幼い恋の思い出が忘れられずに、その思い出のホテルにやってきたのだ。その相手の名前は…コンラート。ナタリアとベッポーは、ラルガンシェ男爵夫妻を名乗り、父、エバート公爵の捜索から逃れようとする。 華やかな晩餐会へのいざない。そこでナタリアは、自分の名を名乗るルチアと、初恋の人、コンラートに鉢合わせ。混乱の中で、華やかに幕は閉じる。
〜 第 2 幕 〜(第1幕の数日後) コンラートは、ナタリアが気になって仕方のない様子。しかし、コンラートは、目の前の乙女と、かつてバーデンで出会った少女が同一人物であることに気がつかない。ナタリアはそんなコンラートにいらだつが、二人の間は急速に接近していく。 ルチアは、ナタリア・エバート公爵令嬢を名乗るうち、次第に自分自身を見失っていく。ヘルベルトにぶつけられるルチアの不安。ヘルベルトは、ついに、自分にとって一番大切なものに気づく。 そんな恋人達を見守るカデット公爵夫人。全てを見通している彼女の言葉に、ルチアの心は安らぐ。 ウェイトレスにちょっかいを出すベッポーの姿に憤慨するコンラート。しかし、ベッポーが口ずさむ歌の旋律に、コンラートはとうとう、ナタリアとの思い出を思い出す。 オペレッタの前夜祭に集った貴族達。そこに、エバート公爵が突然現れる。全てを明らかにして、ナタリアを連れ帰ろうとするエバート公爵に、ヘルベルトは、真実の愛を貫く誓いを叩き付ける。
〜 第 3 幕 〜(第2幕の翌日) やっとナタリアの正体を知ったコンラート。恋を語らう二人の前に、愛を貫くことを誓うヘルベルトとルチアが現れる。 二組のカップルに知恵を授けるカデット公爵夫人。ナタリアが失踪を装い、不安にかられたエバート公爵から、全ての許しを得ようというのだ。エバート公爵との話し合いは私に任せなさい、という夫人の言葉に従い、四人の若者たちは別室で結果を待つことにする。 エバート公爵は、ナタリアが書いたという失踪をほのめかす手紙を受け取るが、一瞬にしていつわりであることを見抜く。「いったいこんな茶番劇がなんになるというのです?」と鼻でせせら笑うエバート公爵をたしなめ、カデット公爵夫人は美しい歌を歌って聴かせる。それはルチアからカデット公爵夫人が教わった子守歌。ルチアの母がよく歌ってくれたというその子守歌は、エバート公爵が若いころ愛を誓い合った女性・アンナとの思い出の歌でもあった。 ルチアが、自分とアンナとの娘であることに気づき、愕然とするエバート公爵。カデット公爵夫人の穏やかな語りかけのなかで、冷たく頑なだったエバート公爵は、二人の娘・ナタリアとルチアの幸せを願う暖かい父親の心を取り戻していく。 四人の若者たちが別室から様子をうかがいにやってくる。おそるおそる父に許しを乞うナタリアに対して、「娘の幸せを願わない父親はいない」と告げるエバート公爵。ルチアの指に光る、アンナとの思い出の指輪を確かめたエバート公爵は、ヘルベルトとルチア、コンラートとナタリア、二組のカップルの結婚を認める。自分たちの愛を貫くことができた四人の若者たちは大喜び。 ホテルに集う貴族や、ホテルに勤める給仕・楽士たちは、自分たちの若かりしころの思い出とその若者たちの姿を重ねあわせ、彼らを暖かく見守りながら、末永い幸せを祈って晴れやかに歌い祝い、幕となる。
脚本家より一言〜見守ること、見守られること〜 見守る。それはただ「見る」だけではなく、「慈しみ」や「優しさ」の込められた視線。 この物語の中で、中心にいるのは若者達だ。彼らは愛し愛され、悩み苦しみ、懸命に、自分で選びとった人生を生きようともがいている。彼らにとって、人生は無限の可能性の海だ。 見守られながら成長し、見守ることを知るために成長する。 本公演の総監督という機会をくれた上に、拙い脚本に素敵な音楽を探してくれた八木原君。 みんなが「見守って」くれた中で、この物語は生れ、育ち、そして今日、独り立ちします。 そして、最後に。 ・・・・・北 教之
使用曲一覧 カール・ツェラー ヨハン・シュトラウス二世 ヨハン・シュトラウス二世 エドムント・アイスラー |