第19回公演
J.シュトラウス2世
「こうもり」
コルンゴルド編曲版 全幕(日本語訳詞上演)

オペレッタプロジェクト14
2007.5.4(金・祝)午後2時開演
ルネこだいら 大ホール
 

スタッフ

芸術監督/制作統括/演出:八木原 良貴
音楽監督/指揮:野町 琢爾
舞踊監督/振付:藤井 明子
美術監督:長谷部 和也
演出補:内藤 明日香
衣裳:水野 ゆり/小森 純子
照明:寺西 岳雄(マーキュリー)
音響:小山 和男(ワンダースリー)
ヘア&メイク:松本 良輔(ラルテ)
翻訳/訳詞:三浦 真弓
大道具:桜井 俊郎(C-COM)
小道具:田代 道夫(高津装飾美術株式会社)
    鳥越 久美子
制作補:笠原 江理子/齋藤 昭典
    辻村 博
練習会場手配:
 榎本 祥子/北 教之
 杉浦 まり/山崎 大作
 上岡 万里子/若田 志野
合宿手配:
 藤本 純也/小林 靖広
 辻村 博
配券手配:
 根上 由紀 /海老名 將
 大坪 加奈/小島 麗未
練習ピアノ:
 大津 佐知子/榎本 祥子/橋本 修一
 釜田 雄介/榎本 健太郎
記録:岡野 肇 (まじかるふぇいす)
会計:
宮崎 健司/天谷 麻紀
事務局長:本山 美瑞

 

キャスト

ガブリエル・フォン・アイゼンシュタイン(富裕な男):佐藤 尚之
ロザリンデ(その妻):久保 直子
フランク(刑務所長):山崎 大作
オルロフスキー公爵(ロシアの大貴族):原 美緒
アルフレード(声楽教師でロザリンデの昔の恋人):利根川 聡
ファルケ博士(アイゼンシュタインの友人):小林 靖広
アデーレ(アイゼンシュタイン家の小間使い):君島 由美子
ブリント博士(アイゼンシュタインの弁護士):海老名 將
イーダ(アデーレの姉):高橋 佳子
フロッシュ(刑務所の看守):鹿島 千尋
イワン(オルロフスキー公爵の召使い):木下 圭一
セルゲイ(オルロフスキー公爵の召使い):小宮山 弘樹

■ファルケに呼ばれたバレエ団メンバー
 ファウスティーネ …畚野 礼子(女8)
 フェリツィタ …笠原 江理子(女2)
 ズィーディ …小島 麗未(女9)
 ミンニ(ミッツィ) …越智 伊穂里
 ヘルミーネ …山田 弥生(女5)
 サビーネ …内藤 明日香

■ファルケに呼ばれた貴族
 ヴィルフ …宮崎 健司
 クラトホヴィル …林 猛

■ファルケに呼ばれた紳士・淑女
 男1       …木下 卓
 男2       …藤本 純也
 男3       …青木 啓
 男4       …石渡 治康
 男5       …齋藤 昭典
 ヴィルツィンガー …長谷部 和也

女1  …大林 弘子
女3  …根上 由紀
女4  …平尾 陽史子
女6  …中江 資子
女7(レーズィ) …木下 香
女10  …山崎 和子
女11  …杉浦 まり
ジョセフィーン …大津 佐知子

 

ごあいさつ

 《こうもり》の演出はこれが三度目。日曜演出家を自称するアマチュアの私が、まさか同じオペレッタを生涯に三回も演出することになろうとは!初めては高校生のとき。オーケストラ付でオペラを上演する伝統のあった不可思議な普通高校の音楽部に籍を置いていた私は、来日していたウィーン・フォルクスオーパーに魅せられて《こうもり》の毒を仰いでしまった。二度目はガレリア座の旗揚げ公演。まさかこんなライフワークになろうとは思わずに始めた“趣味の園芸”ならぬ“趣味のオペラ制作”。無我夢中で作った舞台。指揮者の野町(当時は大学生!)と、レンタカーで道具や楽器を運搬したことの方が、中身よりも思い出として残っている。そして今回、ガレリア座14年目、座として初めての再演。前回の《モンマルトルのすみれ》のプログラムに、次回公演は《こうもり》と載せてしまったら、終演後、熱心なオペレッタ・ファンに取り囲まれた。曰く、「何もガレリア座が《こうもり》やらなくてもいいんじゃない?」との温かい激励の脅迫。なら「まだ日本で上演されていない《こうもり》なら文句ないでしょ?」って、私の悪いムシがうずいてしまったわけ。
今年、没後50年を迎える忘れられた作曲家、コルンゴルト。ウィーンに生まれた天才少年として、モーツァルト級の才能を発揮、演出家マックス・ラインハルトと組んで大好きなヨハン・シュトラウスのオペレッタを数多く蘇生させ、“ユダヤ人”であるがゆえにナチスに迫害されて、ハリウッドで映画音楽作曲家として成功した男。だが終戦により戻った故国、愛するウィーンにはもうコルンゴルトの居場所はなかった。ハリウッド帰りの天才にウィーンは冷たかった。
 ウィーンとは本当に不思議な町だ。ハプスブルク帝国の栄華をいつまでも引きずって、ノスタルジーに首までどっぷり浸かりながら、おらが町を自慢し続ける(現代に至ってもなお!)。なのに、ウィーンを愛した天才たち、そう、モーツァルトにだって冷たくしてしまう。手のひらを返したように。
 今回の私の演出だが、旗揚げの再演といったセンチメンタルな感情も、特別の思惑もない。あるとすれば時代によって放浪者に仕立てられた哀れな天才へのささやかなオマージュ。コルンゴルトの後半生を華やかに飾った《ハリウッド的》なるものと、彼が忘れられなかった音楽の都、その地を愛した作曲家たちの作品をコラージュのように配して遊んでみた…そんなところだろうか。みなさんはそんな私の悪戯にいくつ気づいて下さるだろうか。そしてそんなことを東洋の端っこでやっている私たちを、コルンゴルトは遠い空の上から、どんな顔をして見てくれるのだろうか。

         ・・・・・ガレリア座主宰 八木原 良貴

 

あらすじ

3幕からなるオペレッタ
初演 ウィーン、アン・デア・ウィーン劇場 1874.4.5 
作曲 ヨハン・シュトラウス2世(1825.10.25 - 1899.6.3)

 

【第1幕】アイゼンシュタインの家

 裕福な銀行家アイゼンシュタインの家の前では、その妻ロザリンデのかつての恋人アルフレードがセレナーデを歌っている。アイゼンシュタインが役人に逆らって八日間の禁固刑になったと聞いて、ロザリンデに逢いに来たのだった<第1曲:可愛い恋人>。アイゼンシュタイン家の小間使いアデーレは姉のイーダから1通の手紙を受け取る。大金持ちのロシア貴族オルロフスキー公爵の館で開催される大舞踏会への誘いであった。けれど使用人の身では行けるはずも無く、アデーレは自分の身の上を嘆く。諦めきれないアデーレは叔母が重病になったと嘘をついて暇をもらおうとするが、アルフレードが気になっているロザリンデは取り合おうとしない<第1,1/4曲:彼と過ごした思い出の日々よ>。夫が留守になるのだから暇はあげられない、と言ってロザリンデはアデーレを下がらせる<第1,1/2曲:会いに行きたい叔母の所へ>。ロザリンデが一人になったのを見計らってアルフレードが部屋に忍んで来るが、タイミング悪くアイゼンシュタインが帰ってきてしまう。彼女はアルフレードを隠すと、慌てて夫を迎える。アイゼンシュタインは不機嫌であった。新米弁護士ブリントの下手な弁護のせいで刑期が三日も延びてしまったのだ<第2曲:何でこんな弁護士に頼んだりしたのだ?!>。ロザリンデがなだめて、やっと機嫌を直したアイゼンシュタインは刑務所行きに備えて夕食を注文する<第2,1/2曲:スープはこんもりと盛りつけた…>。そこへアイゼンシュタインの友人ファルケが訪ねて来る。彼はある企みを持って、アイゼンシュタインをオルロフスキー邸の大舞踏会へ誘う。刑務所には明日の朝までに行けば良いとそそのかすファルケの言葉に、すっかりその気になるアイゼンシュタイン<第3曲:夜が始まる!>。夫のはしゃぎ様を訝るロザリンデにも、ファルケは一通の招待状を手渡して帰って行く。正装して上機嫌の夫を見たロザリンデは呆れながらも自分も楽しもうと考える。それぞれの思惑を抱えアイゼンシュタイン、ロザリンデ、アデーレは空涙で別れを告げる<第4曲:独りになるのね>。意気揚々と刑務所(実は舞踏会)に出掛けたアイゼンシュタインを見送ると、女主人に思いを寄せる男の存在に気付いていたアデーレは、ロザリンデにもっとくつろいで羽を伸ばすように勧める。ロザリンデもアデーレに暇をやって、アルフレードを迎えることにする<第4,1/2曲:うんと軽く薄い服に>。再びロザリンデを訪れたアルフレードは、アイゼンシュタインのガウンを着てすっかり亭主を気取り、一夜の恋を楽しもうと歌う<第5曲:飲もう!二人で!>。始めは困惑するロザリンデも彼の勢いに乗せられその気になるのだが、またもや邪魔が入る。刑務所長のフランクがアイゼンシュタインを連行しにやって来たのだ。夫の留守中に男を引き入れたことが知られては大変と慌てたロザリンデは、とっさにアルフレードを夫に仕立てる。それを信じたフランクはアルフレードを連行し、ロザリンデは再び独りになってしまう。ふとファルケに貰った招待状を思い出し、読むとオルロフスキー邸の舞踏会への案内であった。喜んだロザリンデはそこで夜を楽しむことにする。

 

【第2幕】オルロフスキー公爵邸

 公爵の豪邸では大舞踏会が開かれ、招待客たちはその華やかさに目を見張る<第6曲:夜が招く!>。客は紳士、淑女にその紛い者まで様々で、広間では色々な光景が繰り広げられる<第6,1/4曲:ねえ、コートをお願いね!>。思い思いに着飾った客たちは遊べるうちに遊んでおこうと歌う<第6,1/2曲:時は瞬く間に>。アデーレもロザリンデのドレスを拝借してやって来るが、招待してくれたはずの姉のイーダは知らないと言う。それでも妹の勢いに押されて彼女を女優のオルガとして紹介することを約束する。一方、館の主オルロフスキーは有り余る財産を持て余しすっかり退屈しきっていた。そんな彼にファルケは「こうもりの復讐」と題した余興を用意していると告げる。アデーレを招待したのも実はファルケであった。そこへ余興の主役、アイゼンシュタインがフランス人ド・ルナール侯爵を名乗って現れる。ファルケの企みに興味を示したオルロフスキーは、アイゼンシュタインに好きなように振る舞うのがこの館のルールだと告げる<第7曲:あらゆる女たちに>。そして楽しい復讐劇が始まる。アデーレを見つけたアイゼンシュタインは、女優だと言い張る彼女に「家の女中によく似ている」と言うが、逆にこんなに美しい女中はいない、と人々の前で笑い者にされてしまう<第8曲:お客様方、ご覧なさい!>。続いてフランス人シュヴァリエ・シャグラン男爵を名乗る刑務所長のフランクが現れ、アイゼンシュタインはフランス語で挨拶する羽目に。珍妙なフランス語会話を見てオルロフスキーも機嫌を良くし皆とワルツを踊る<第8,1/2曲:ワルツはいかが?>。さらに、仮面をつけてハンガリーの伯爵夫人を装ったロザリンデがやって来る。彼女は刑務所に行かずにアデーレと遊んでいる夫を見つけ、ファルケの計画に乗ってアイゼンシュタインを懲らしめることにする。そうとは知らないアイゼンシュタインはさっそく自慢の懐中時計を見せて美しい伯爵夫人を口説きにかかるが、逆にロザリンデの罠にはまり、まんまと時計を取られてしまう<第9曲:甘えた素振りで>。悔しがるアイゼンシュタインだが、皆の話題がファルケのあだ名「こうもり博士」のことになると、得意げにその由来を話して聞かせる。5年前独身だったアイゼンシュタインとファルケは一緒に仮面舞踏会に出かけたが、アイゼンシュタインは泥酔したファルケをこうもりの仮装のまま街の広場に置いて帰ってしまったのだ。夜が明けて奇妙な扮装のファルケを見た街の人々は、以来、彼をこうもり博士と呼ぶようになった。そしてこれこそが「こうもりの復讐」の原因なのだが、アイゼンシュタインは知る由もない。皆がそれぞれに楽しむなか、ロザリンデも交えてワルツとなる<第10曲:ワルツをいかがです、マダム?>。夜は更けて、人々はシャンパンを酌み交わしながら泡立つ酒の王者を讃える<第10,1/2曲:着席!><第11曲:きらめく泡に浮かぶは人生>。皆が今宵の出会いを喜びワルツを踊るなか、やがて午前6時の鐘が鳴る。刑務所ですぐに再会するとは思いもよらないアイゼンシュタインとフランクは次の角まで一緒に、と大慌てで帰路につく。偽の女優アデーレとイーダもいつの間にか館の外に放り出され、ファルケから全ての企みを聞かされた人々は大笑いして幕となる。


【第3幕】フランクが所長を勤める刑務所

 刑務所では看守のフロッシュが所長の留守をいいことに、すっかり酔っぱらってクダをまいている。牢屋の奥ではアルフレードが朝から歌い、触発されたフロッシュも自慢の喉を披露する<第12a曲:あぁウィーン、古い昔話を(挿入曲:コルンゴルト作曲  歌劇「死の都」より)>。そこへ酩酊状態のフランクが帰ってくるが、自分のコートと踊ったり、あらぬ気配を追いかけたりと奇行を繰り返す<第13曲:オルガ、こっちへおいで!>。フロッシュがアイゼンシュタイン(実はアルフレード)の弁護のためにブリントを呼んだことを報告していると、アデーレとイーダが刑務所を訪ねて来る。アデーレは実は自分は女優ではなくアイゼンシュタイン家の小間使いであることを打ち明け、シャグラン男爵(実はフランク)の力で本物の女優にして欲しいと懇願する。真実を知って呆れるフランクにアデーレは自分の演技の実力を披露する<第14曲:田舎娘なら>。アデーレに魅了されたフランクは彼女を世話することを約束するが、アイゼンシュタインが出頭して来たので慌てて二人を牢の一室へ隠す。アイゼンシュタインはシャグラン男爵が刑務所長と聞いて、自分も実は侯爵ではないと告白するが、牢の中には別のアイゼンシュタインがいると言われ、驚く<第14,1/2曲:家に居た?アイゼンシュタイン>。もう一人のアイゼンシュタインがロザリンデと自分の家に居たことを知ったアイゼンシュタインは激怒する。フロッシュに呼ばれて来たブリントの服を取り上げ弁護士になりすますと、ロザリンデとアルフレードの事情聴取にかかる。しかし二人の言葉に遂に堪えきれず正体を明かして妻をなじる<第15曲:人に言える?>。するとロザリンデは舞踏会でアイゼンシュタインから取り上げた懐中時計を取り出し、先に浮気をしたのはどちら?と詰め寄る。そこへ全ての事情を知った人々とファルケがやって来て、舞踏会も登場人物も「こうもりの復讐」で、アイゼンシュタインを笑い者にするためと種明かしをする<第16曲:もういいだろう?こうもりよ>。アデーレはめでたくオルロフスキーをパトロンに得て、アイゼンシュタインも妻の浮気が芝居の一部と一安心。フロッシュが全てはシャンパンのせいで、いつの世も同じことの繰り返しと締めくくると、最後は皆でシャンパンを讃えて幕となる。