第21回公演
C.F.グノー
 
「ファウスト」
全5幕(日本語訳詞上演)
オペラプロジェクト8
2009.6.21(日)午後2時開演
新宿区立新宿文化センター 大ホール
 

スタッフ

芸術監督/制作統括/演出 八木原 良貴
音楽監督/指揮 野町 琢爾
舞踊監督/振付 藤井 明子
美術監督 長谷部 和也
演出補 内藤 明日香
衣裳 ガレリア座衣裳部
照明 寺西 岳雄(マーキュリー)
音響 小山 和男(ワンダースリー)
ヘア&メイク 松本 良輔(ラルテ)
翻訳/訳詞 三浦 真弓
大道具 細川 保則(大泉美術)
小道具 鳥越 久美子/榎本 祥子/田代 道夫(高津装飾美術株式会社)
制作補 君島 由美子/小林 靖広/橋本 修一
練習会場手配 榎本 祥子/北  教之/齋藤 昭典/杉浦 まり/上岡 万里子
合宿手配 藤本 純也
配券手配 高橋 佳子/小島 麗未/利根川 聡/蘆田 幸恵
練習ピアノ 榎本 祥子/榎本 健太郎/釜田 雄介
記録 岡野 肇 (まじかるふぇいす)
会計 宮崎 健司/橋本 修一
事務局長 藤澤 寧都

キャスト

ファウスト(老学者) 丹下 知浩(テノール)
メフィストフェレス(悪魔) 中村 隆太(バス)
マルガレーテ(町娘) 大津 佐知子(ソプラノ)
ヴァランタン(マルガレーテの兄) 北  教之(バリトン)
シーベル(町の若者) 君島 由美子(ソプラノ)
マルト(マルガレーテの隣人) 大林 弘子(ソプラノ)
ワーグナー(ヴァランタンの友人) 林   猛(バリトン)

バレエ配役(ワルプルギスの夜)
メフィストフェレス 中村 緋奈子
マルガレーテ 荻島 あずさ
ヴァランタン 山田 弥生
シーベル 越智 伊穂里
マルト松原 礼子

 

ごあいさつ

 私も今年44歳になりました。ガレリア座の最終公演がリヒャルト・シュトラウスの《ばらの騎士》になることは、座員及び関係者には周知のことですが、さて、残りの人生で何公演できるものか、そして何を取り上げるか、真剣に考え始めるようになりました。

 そしてその答えのひとつが《ファウスト》です。

 全5幕、バレエ付き、台詞もないのに4時間弱かかるこの壮大なオペラと私との結びつきは、またしても私のオペラ制作の原点となる高校時代に遡ります。

 世田谷区下馬にある東京学芸大学附属高校音楽部は当時、学園祭でオペラ上演を行う無謀な伝統がありました。もちろんオケ付きで、舞台もちゃんと(といっても学祭レベルですが)しつらえます。ここでビョーキにかかってしまった人は多く、演出家の中村敬一さんは先輩ですし、バリトンの小森輝彦君や、三角枝里佳さんは私の一つ後輩にあたります。その小森君や三角さんたちの学年が上演したのが《ファウスト》でした。

 2年生が主体となる公演について、ひとつ上の3年生は受験があるので、指導はもちろん、基本的に口は出しません。うるさい先輩は来てくれない方が後輩もやりやすいですしね。私も例にもれず、公演に関わることはほとんどなかったのですが、それでも後輩たちの練習から垣間見られる《ファウスト》はじつに魅力的でした。何より音楽がいいんです。教会オルガニストの経験もあるグノーのメロディは、ときに崇高に響き、ときに世俗の楽しさを謳歌するのです。ストーリーも演出的に腕のふるい甲斐のあるものでした。悪魔の登場はもとより、ファウストの葛藤、マルガレーテの転落、脇の人物たちもきわめて個性的です。加えて単独のオーケストラピースとしても有名な7つのバレエ音楽をどう調理するか。当時の後輩たちの努力にも拍手を惜しみませんでしたが、いつかこの作品に挑んでみたい…それは私の強い願望となりました。

 創立15周年…思えば遠くに来たもんだ、歌の文句でないけれど、そろそろ機が熟した―これが私の本公演への思いです。演出の稽古を始めた頃は不安だった私のアイディアも、歌い手たちとの対話、合唱陣の意気込み、オーケストラの頑張り、バレエ陣の熱意を目の当たりにするにつれ、それは確信へと変わり、今はこの作品を、この時期に取り上げられて本当に幸せだと思っています。

 本日の舞台から、15年の歴史と、いつもと変わらぬアマチュア精神を感じ取っていただければ幸いです。本日はご来場ありがとうございました。

         ・・・・・ガレリア座主宰 八木原 良貴

あらすじ

 第1幕:ファウストの書斎
夜明け前、学者ファウストは書斎で一人物思いにふけっている。
人生の意味を知るために生涯をかけて学問を究めたが、未だにその答えを得られないのであった。
空が白んでも彼の心に夜明けは訪れず、遂に死を決意する。
そんな彼に、村娘や農夫たちの明るい歌声は失ってしまった青春を思い出させるのであった。
ファウストが夢や希望、知識をも否定して神を呪ったとき、悪魔メフィストフェレスが現れる。
彼はファウストに対して魂と引き換えに望みを叶えてやろうと告げ、躊躇するファウストにマルガレーテの幻想を見せる。
その美しさに心を奪われたファウストは、青春を取り戻すために悪魔との契約書にサインをしてしまう。
魔力で青春を取り戻したファウストはメフィストフェレスと共にマルガレーテに逢うため町へ向かう。[二重唱:町へ!]
 
 第2幕:町の広場
町の広場には人々が集まり陽気に歌っている[合唱:飲んだら注いでもっと飲め!]。
そこへヴァランタンが現れる。彼は戦場へ旅立つ前に妹マルガレーテから貰ったお守りのメダルを胸に、自分の留守中、彼女を守ってくれるよう神に祈る[カヴァティーナ:旅立つ前に]。
シーベルや町の若者たちは僕らがついていると彼をはげまし、ワーグナーが景気付けに得意の歌を披露しようとする。そこへメフィストフェレスが現れ、人々を惑わす[アリア:黄金の仔牛]を歌う。
夢中で歌い踊る人々を見て、一人ヴァランタンだけは不審に思い、悪魔が不吉な予言をしてマルガレーテの名を口にしたとき、彼は遂に剣を抜く。
しかしその剣も魔力で真二つに折られてしまう。
ヴァランタンは驚愕するも、折れた剣を十字架にしてメフィストフェレスに突きつけ、神に加護を祈る。
十字架に一瞬ひるんだフリをしたメフィストフェレスであったが、ファウストが来てマルガレーテに逢わせるようせがむと、再び人々を呼び寄せワルツを踊らせる[合唱:誘うそよ風には]。
ファウストは通りがかったマルガレーテを呼び止め、彼女も一目で恋におちる。
まんまと二人を引き逢わせることに成功したメフィストフェレスがほくそ笑む中、人々は狂乱のワルツに酔いしれる。

 第3幕:マルガレーテの家の前
広場でマルガレーテに声をかけそこなったシーベルは、彼女に花束を贈ろうと訪ねてくる[アリア:花よ僕の代わりに]。
彼の摘んだ花は、一度は悪魔の予言どおりに散ってしまうが、祈りを捧げると呪いは消えてしまう。
それを見たメフィストフェレスは花束よりも娘の気を引く贈り物を用意しようとファウストに持ちかける。
しかしマルガレーテの清らかな美しさに心を奪われたファウストは一人彼女に思いを馳せる[アリア:この清らかな家に]。
一方メフィストフェレスはマルガレーテを誘惑するための宝石箱を庭先に置く。
悪魔が奏でる運命の糸車に導かれるようにマルガレーテが現れる[アリア:トゥーレの王]。
広場で出逢ったファウストが忘れられずにいながら、恥じらいから自分をたしなめる彼女だったが、悪魔の見せる幻の宝石を身につけると自分の美しさに自信を抱く[アリア:宝石の歌]。
そこへマルガレーテの隣人、マルトが通り掛かり、恋をしている娘の様子を目ざとく見つけて話しかける。
メフィストフェレスはせっかくのお膳立てに邪魔が入ったのを見て、すかさずマルトを誘惑し、その隙にファウストをマルガレーテに近づけると自分は姿をくらます[四重唱:今なら腕を?]。
二人きりになったファウストとマルガレーテは互いの愛を打ち明ける[二重唱:夜だわ…]。
初恋に戸惑いを見せるマルガレーテであったが、悪魔の思惑通り遂に二人は結ばれる。

 第4幕 第1場:マルガレーテの家の前
ファウストはマルガレーテの前から姿を消す。
マルガレーテは人々から“身籠った挙句に捨てられたのだ”と蔑まれながらもファウストの帰りをひたすら待っていた[アリア:糸紬車の歌]。
シーベルだけは彼女を気遣って訪ねて来るが、ファウストを愛し続ける姿を見て報われない恋に絶望し、自殺を図るが死ぬこともできない[ロマンス:君が微笑んでた頃は]。

 第4幕 第2場:教会
マルガレーテは一人教会を訪れ神に許しを請うが、その傍に立つのはメフィストフェレスであった。
悪魔がマルガレーテと呼ぶと、呼応するように聖職者たちはこの世の終わりを告げる。
追い詰められたマルガレーテは必死に祈り続け、神が彼女の願いに耳を傾けようとしていることを察知したメフィストフェレスは赤子の型代を彼女に突きつける。
 
 第4幕 第3場:町の広場
兵士たちは凱旋するが、みな傷を負いようやく家族との再会を果たす[兵士の合唱:武器は要らぬ!]。
司令官のヴァランタンだけが、意気揚々とシーベルに妹の消息を尋ねるが、彼の態度に異常を感じ家に向かう。
丁度そのころファウストとメフィストフェレスも町に戻っていた。
メフィストフェレスは今なおマルガレーテを思いつづけるファウストを嘲笑い歌う[セレナーデ:お前には似合わぬ寝たふりは!]。
そこへ怒りに燃えるヴァランタンが現れ、妹を汚した男に決闘を挑む[三重唱:何の用だね?]。
怖れおののくファウストだったが、悪魔の力でヴァランタンを返り討ちにすると慌ててその場を逃れる。
マルガレーテが駆け付けるが、兄が自分の不義を呪ったまま息絶えると気が触れてしまう。死に切れないシーベルも正気を失い傍らの女を凌辱する。

 第5幕 第1場:ワルプルギスの夜
メフィストフェレスは魔物たちが飛び交う山にファウストを連れてくると、快楽に身を任せるよう促す。
しかしそこでファウストが見たものは、自分が手に入れた青春と引き換えになった多くの悲劇であった。
 
[バレエ曲1:メフィストフェレスの愉悦]悪魔は世界を我がもの顔に弄ぶ。
[バレエ曲2:民衆に蔑まれるマルガレーテ]穢れを知らぬ少女は愛ゆえに不義の子を宿し人々から蔑まれる。
[バレエ曲3:戦場のヴァランタン]ヴァランタンは多くの味方を犠牲にして勝利を得る。
[バレエ曲4:マルトの死]偶然悪魔に出逢い魅入られたマルトは彼を追い求めるが最後には殺される。
[バレエ曲5:シーベルの死]恋心を踏みにじられたシーベルは、運命の糸に絡め取られ息絶える。
[バレエ曲6:死んだ子供の遊戯]ファウストは戯れる子供たちの亡霊の中に自分とマルガレーテの子を見つける。
[バレエ曲7:美女たちの宴]ファウストは望んでいた青春の狂乱と情熱に酔いしれるが、それがあまりに多くのものを犠牲にしてしまったことに気付き、悪魔の呪縛を逃れ恋人を助けに行く。
 
 第5幕 第2場:牢獄
マルガレーテは子殺しの罪で牢に捕らわれていた。
ファウストが駆け付けても、正気を失った彼女に見えるのは思い出の世界だけであった。
メフィストフェレスが来て夜明け前に逃げるよう迫ると、悪魔の陰に怯えたマルガレーテは天の神に救いを求め息絶える[三重唱:空の天使たちよ!]。
絶望したファウストも力尽きるが、その魂は悪魔の契約から解放される。
 
<舞台美術イメージボード>